家族や友人との間でお金や物品の貸し借りがあった場合、口約束で済まされるケースが多いでしょう。
しかし後にトラブルにならないためにも借用書を書いた方がお互いに安心です。
万が一借主が約束を守らない時の証拠として準備しておきましょう。
- どのように借用書を書けばいいか分からない
- 安心して相手と取引したい
上記のようなお金を貸す側にいる方に、わかりやすく借用書の基礎知識やメリット・デメリット、書き方(事例付き)について解説します。
後半では借用書の書き方以外に、利子の決め方や印紙についても解説しています。
この記事で得られる知識
- 借用書の基礎知識
- 借用書のメリット・デメリット
- 借用書の書き方(事例付き)
- 借用書の利子の決め方や印紙について
借用書の意味と知っておきたい基礎知識
借用書は、お金や物の貸し借りがあったことを証明する書類です。
借用書は借りる物によって名称が変わります。
「お金の貸し借り」は金銭借用書または金銭消費貸借契約証書と呼ばれ「物品の貸し借り」は物品借用書と呼ばれます。
貸し借りする金額に関わらず借用書は作成できます。
少額だから作成するのは気が引けるという人もいると思いますが、自分の財産を守るためにも借用書を作成した方が得策です。
借用書が無効になる注意点は下記の2つです。
- 未成年者が借主だった場合
- 時効になる場合
借主が未成年者である場合は借用書を作成しても無効になります。
未成年者は制限行為能力者に当たり、一人で完全な法律行為(契約を結ぶなど)ができません。
そのため正しく借用書を作ったとしても貸し借り自体が無効になってしまうのです。
制限行為能力者は未成年者の他にも認知症や買い物依存症なども当てはまりますので借主が制限行為能力者に該当しないか事前に確認した方がいいでしょう。
もしどうしても貸さなければならない状況であれば親権者・後見人・保佐人・補助人などの署名と押印をお願いする必要があります。
返済期限から10年経過しても返済されず貸主も何の行動も起こさなかった場合には時効になります。
これを防ぐためには貸主が返済を請求する必要がありますが、ただ「返せ」と言うのではなく裁判所で時効の中断を申し立てなければなりません。

申し立てにも借用書が証拠として有効になるので、後々のことを考えても借用書は作成しておいた方がいいです。
借用書は誰が書くべき?
借用書は貸主・借主のどちらが書くかは決められていませんが、貸主が書くことが一般的です。
どちら側にも不利な条件にならないように双方で話し合い、その結果を貸主が記入。最後に借主が押印します。
借用書を作成する際は、鉛筆やシャーペンなど消して書き直せるものを使用するのはNGです。
ボールペンなど改ざんできないもので書くようにしてください。
作成した借用書は貸主が保管しますが紛失や改ざんの疑惑を持たれないために念のため借主も1通保管しておくといいでしょう。
借用書のメリット・デメリット
借用書を作成することで多くのメリットが得られますがデメリットも少なからずあります。
- トラブルを避けられる
- 借主に返済の動機付けができる
- 裁判で証拠となる
口約束でのお金や物品の貸し借りはトラブルの元です。
「貸した、借りてない」と口論となったり金額や返済期日などが双方で食い違ったりする場面も出てきます。
特に親しい間柄では「きちんと返してくれるだろう」と安心して借用書の作成をせずに貸すと争いの種になるので注意が必要です。
不要なトラブルを避けるためにも借用書は準備しておきましょう。
借主の中には借りたものをそのまま自分のものにしてしまおうと考える人もいるのが現実です。
借りた証拠がなければ貸主が何を言おうと無視すれば済みます。
しかし借用書があれば借主の頭の中には返済の2文字が常に存在し続け、返済しなければならないという意識が働きます。
借主が返済せずに裁判になった場合、貸し借りの事実を証明するものが必要になります。
口約束やメモでは証拠とならないため借用書があると契約が成立したことを証明できるので有効です。
- 人間関係が悪化する
- 法的強制力がない
会社や店との取引で借用書を作成するのは当然ですが、個人間の貸し借りで作成することはあまり一般的ではありません。
借主からすれば「自分は信用されていない」と気分を害することもあるでしょう。
特に友人や家族間での貸し借りに借用書を作成するとなると人間関係が悪化する恐れがあります。
借用書は裁判で有力な証拠となりますが借用書だけでは取立てや財産の差し押さえをできるわけではありません。
そこまでの法的効力はなく証拠としての役割を果たすのみです。
裁判をして返済させる手続きが必要になります。
そもそも借用書は貸し借りの事実・内容を証拠として残しておくための書面です。
強制的に取り立てをした場合、恐喝や迷惑行為として通報される可能性もあります。

借用書の効力の範囲を知っておくことは、自分の身を守るためにも大切です。
借用書の書き方を解説
借用書には貸主と借主が話し合った内容を記入します。
「いつ」「誰が」「誰に」「いくら貸して」「いつ返すのか」など必要最低限の項目が書かれていない場合には法的に有効となりません。
また貸主・借主どちらかに不利な条件が入っていたり返済について具体的に書かれていなかったりなどトラブルに発展しやすくなります。
借用書の基本構成10項目
借用書を作成する際には書くべき項目が10つあります。
もっと詳しく書きたい場合はこの10項目をベースにして付け足していくといいでしょう。
- 表題 (借用書、借用証など)
- 宛名 (貸主の名前)
- 金額
- 貸し借りの事実
- 利息
- 支払い方法・返済方法
- 返済期限
- 借りた日付(借主が実際にお金を受け取った日にち)
- 借主 (借主の住所・氏名・捺印)
- 連帯保証人 (連帯保証人の住所・氏名・捺印)
借用書を書くときのポイント2つ。
- 返済方法と期日はより細かく具体的に書く
- 金額は改ざん防止のため大字を使用する
返済方法といっても一括返済か分割か?銀行振り込み?手渡し?などを決めておくべきです。
また返済期日についても1年後などではなく年月日を明記することも忘れはいけません。
より細かく具体的に書くことで双方の安心にもつながります。
私たちが日常で使っているアラビア数字(1、2…)や漢数字(一、二…)は借用書での使用は控えた方がいいでしょう。
理由は書き足して金額を変えることができるためです。
借用書には大字という数字を使って金額を書きます。
漢数字 | 大字 |
---|---|
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
十 | 拾 |
百 | 陌・佰 |
千 | 阡・仟 |
万 | 萬 |
十万 | 壱拾萬 |
百万 | 壱陌萬・壱佰萬 |
例えば150万は壱陌伍拾萬と書きます。
アラビア数字や漢数字を使用しても借用書は無効にはなりません。
あくまでも改ざん防止目的です。
借用書の事例を紹介
実際に記入した借用書は、こちらのようになります。

記入する項目や内容についての細かな規定はありません。
借用書には貸し借りをする金額、いつ・どのように返済するのかが明確になるように記載しましょう。
保証人も利子もない場合の借用書の書き方
保証人も利子もない借用書の場合、利息と連帯保証人の項目は記載不要です。
借用書の基本構成10項目の中の利息と連帯保証人以外の項目だけ書きましょう。
保証人がいるのであれば借主の連帯保証人が氏名と住所を書いて押印する必要があります。
仮に借主が返済できない場合は連帯保証人が返済の責任を負いますので借用書の内容を必ず確認してもらうようにしましょう。
利子を設定する時は利子の支払い方法や支払いが遅れた場合の延滞料も明記します。
利子は適当に決めていいものではありません。
個人間の貸し借りでも利息制限法という法律が適応され、制限を超える利子は無効になります。
利子は15〜20%が上限です。
元本の金額によって利率が変動するので自分が貸し借りする金額を当てはめてみましょう。
元本 | 上限額 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上〜100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
例えば9万円では利子は20%の1万8000円が上限です。
これを超えると無効になってしまうので元本が9万円の場合は1万8000円以下に利子を設定しましょう。
借用書に必要な印紙について
お金の貸し借りをする時は収入印紙を貼る必要があります。
元本が1万円未満なら収入印紙は不要ですが元本が1万円以上の場合は収入印紙を貼らなければなりません。
元本がいくらかによって収入印紙の額も変わりますので下記の表を参考にしてください。
元本 | 収入印紙の額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円超え〜50万円以下のもの | 400円 |
50万円超え〜100万円以下のもの | 1千円 |
100万円超え〜500万円以下のもの | 2千円 |
500万円超え〜1千万円以下のもの | 1万円 |
1千万円超え〜5千万円以下のもの | 2万円 |
5千万円超え〜1億円以下のもの | 6万円 |
1億円超え〜5億円以下のもの | 10万円 |
5億円超え〜10億円以下のもの | 20万円 |
10億円超え〜50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
収入印紙を貼らないと印紙税法に違反します。
仮に違反した場合はペナルティとして本来貼るべき収入印紙の3倍の金額を支払うことになりますので、個人間の借用書でも元本が1万円以上ならば収入印紙を貼りましょう。
元本が高額になると収入印紙の額も上がります。
そうなると貸主と借主のどちらが印紙の額を負担するのかが問題になるでしょう。
答えとしてはどちらが負担してもいいですし折半して負担しても大丈夫です。
収入印紙を貼った後、忘れがちなのが消印です。
収入印紙の額を負担した人が消印を押すのが原則です。
この消印を押し忘れると貼った収入印紙と同額の罰金が課せられますので収入印紙を貼って安心せずに必ず消印まで押しましょう。

消印のハンコに指定はなく、シャチハタで押してもいいですしボールペンなどで署名しても差し支えありません。印紙からはみ出して借用書にまたがるように押してください。
物品の貸し借りにおける借用書の書き方
物品の借用書は金額の代わりに物品名・数量を書きます。
また物品の扱い方についても条件を設定できます。
例えば貸した物が破損・紛失したら同じ物を購入して返すのかお金で返すのかなどを、あらかじめ決めておく必要があります。
破損が生じて修理する場合は修理費用をどのくらい負担するかについても記載しておくといいでしょう。
また使用目的を明記して、それ以外の目的での使用を制限すると安心です。